約 2,307,917 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/180.html
「狐狩り」 ”狐狩り”という競技がある。 人間が銃を持って獲物を追うのではなく掛け声で猟犬を操り、いかに早く狐を”仕留めさせる”かを競う競技だ。 イギリス貴族のスポーツとして愛されてきたというこの競技は、21世紀に入って動物保護の見地から禁止法が施行された。 西暦2036年。 狐狩りは形をかえて存在している。 「まったく、夜中の上に雨ときてる。ナンバーテン(最悪)だぜ。」 背中に装備したスラスターユニットをふかしてビルの屋上へ着地したMMS、俺と同じストラーフ型のチャーリーが言う。 だが言葉とは裏腹に表情は生き生きとしていた。久しぶりのアウトドアミッションだから無理もない。 「その割りには嬉しそうじゃないかチャーリー?」 「へへ。今回の狐はストラーフだろ?俺たちと同じで高性能だ、久しぶりに狩り甲斐がある。Cドールやポイポイどもはトロくていけねぇ、張りがねぇよ」 ”狐”は当然最後には破壊される。 そのためほとんどの場合は中古市場でも売れなくなった旧型の愛玩用や安価な害虫駆除用の機体が使われる。 高価な武装神姫が使われることは珍しい。 今回肩に装備した高感度センサーで眼下の夜景をサーチしながら、自分(ストラーフ)がもう狐に使われるようなロートルになったのかという思いがわいた。 『油断してヘマをするなよチャーリー。俺に恥をかかせたら電源を入れたままスクラップにしてやるからな。』 マスターの声が無線で届く。 『あと120秒センシングして発見できなければ次のポイントへ向かえブラボー。』 「了解。 質問の許可を頂けますかマスター?」 『いってみろ』 「今回の狐について何か情報をお持ちでしょうか?」 マスターの声に首をすくめていたチャーリーがこちらを見た。おかしなことを聞くと思ったのだろう。 「相手は武装神姫です。AIの成長を予測できる情報があれば戦闘を有利に展開できると推察します。」 まるで指揮官機アルファのような事を付け加えた。 自分でも驚いた。 武装もしてない狐役に遅れをとる気など毛頭ないのに。 きっと… 俺が知りたいのは・・・ どうしてそのストラーフがオーナーに捨てられたのか、だ。 『狐になるという事は使い物にならんという事だ。お前らが危惧するような成長はしていない。安心しろ。』 アルファに聞いたことがある。AIの成長に失敗するケースがあるのだと。 武装神姫でありながら戦闘に怯え、拒むようになるのだと。 マスターの言葉でその話を思い出すと 不安が嘘のように消えていった。 武装神姫である誇りを忘れ、ただの愛玩人形と変わらん臆病者か。 狐になって当然というわけだ。 俺は違う。 「使い物にならない」事などない。 『俺はお前達の成長を信じているからな。失望させないでくれよ、ブラボー。』 マスター・・・ コアのあたりが熱くなったように感じる。 「PiPi!!」 センサーが反応した。チャーリーと視線をあわせる。 「いくぞ、チャーリー!」 人差し指をたてて見せ、反応のあった眼下へスラスターユニット噴かしてダイヴする。 「マジかよ、ブラボー!」 その様に驚きと喜びのまじった声が後に続く。 指1本。 それは60秒で仕留めるという決意。 mission complete-
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1362.html
さて、夕飯後はいつものように、TV見ながらのまったりタイムです。 いつものようにマスターさんは両手で湯飲みをもって正座で、私もいつものようにマスターさんに並ぶように卓袱台の上で正座で。 最近、『いつものように』というのは、わりと高い幸せポイントを叩き出す要素なのではないかと思ったりしています。 その証拠にドッグテイルも、激しさこそないもののずっとふーりふーりと、止まることなく振られ続けているのです。 その一方で、『いつものよう』ではないからこそ幸せな部分もありまして。 具体的に言いますと、正座する私の下に敷かれた、武装神姫サイズの藍色の座布団です。 過日の神姫センター訪問の際にきちんとした正座が可能となった私に合わせ、マスターさんがお土産と称してお買い求め下さった、お気に入りの一品なのです。 武器や装備といった物以外にも、こういった痒いところに手の届くような小道具も扱っているあたり、神姫センターの品揃えは心憎いものですね。 と、マスターさんがごくさりげなく、湯飲みを卓袱台の上に置きました。 私は特に応えもなく、急須を抱えてお代わりを注ぎます。 ちなみに私の現在の装備は、ハウリン基本セットから武器と手甲・拳狼を外し、手は代わりに通常のマニュピレーターに換装しているている状態です。単純なパワーでは拳狼と腕甲・万武および胸甲・心守を連結させたほうが上ですが、やはり利便性では、指がしっかり使える通常のマニュピレーターのほうがなにかと使い勝手がよいのです。 「ありがとうございます」 深々。 「どういたしまして」 深々。 このあたりのやり取りも、すでに特別な会話は必要なくなっております。 これもまた『いつものように』な、幸せなやり取りですね。 『いつものように』あれば幸せで、『いつものようでない』ことも幸せで。 ああ、かくも世の中は幸せに満ちているのです、しみじみ。 「ところで犬子さん」 「何でしょうマスターさん」 ニュースが天気予報コーナーに変わったあたりで、マスターさんが口を開きました。 顔だけを僅かにこちらに向け膝は向けなおしていないので、話題としては軽いものになると推測されます。 とはいえこちらはお仕えする身、座布団の上でマスターさんに膝を向けなおし、拝聴する姿勢を取ります。 「ふと思い出したのですが、犬子さんにはあらかじめプログラムされた隠し芸をお持ちなのでしたよね」 「はい、ハウリン芸のことですね?」 「ええと、そんなお名前でしたっけか?」 「正確にはハウリンタイプ48の宴会芸カッコ封印指定により現在は正確には47カッコ閉じる、となっておりますが、長いので省略してハウリン芸と」 「なるほど。いえ、あれには他にどんなものがあるのかな、と思いまして」 「なるほどなるほど。では論より証拠、百聞は一見にしかず、ハウリン芸のメドレー公開をば」 「いえ! 実演の前に、ぜひとも説明を!」 ……珍しい、マスターさんがエクスクラメーションマークつきの台詞をお話になるとは。 これはアレですね、以前公開し封印指定された『ゾンビ・ハンド』が、程よくトラウマ風味になっているご様子。 確かにアレは、起動直後で人間の情緒に通じていなかったとはいえ、失敗でした。 いかにあらかじめ外されていた腕部パーツがあって下準備的に絶好のチャンスだったとはいえ、マスターさんが武装神姫がパーツ分解可能であることに違和感を感じていらっしゃった時にわざわざあの技を選ぶとは……まさに「空気読め」と言うに相応しい失態です。 ですが。だからこそなおの事、誤解は解いておく必要がありますね。 私は座布団から立ち上がりますと、にっこりとマスターさんに笑いかけました。 「ご安心ください、マスターさん。『ゾンビ・ハンド』の類な芸ばかりではございませんので。例えば……」 だん、と私は脚甲・狗駆を踏み鳴らします。そして右足を大きく踏み出しつつ、前方に素早く左右で正拳二連。 すかさず左足が跳ね上がり、前蹴り。その左足で踏み込むと同時に、両の手を開くようにして前後に掌底打ち。 そして、右腕を下から、左腕は上から大きく回し、胸の前で交差させてから、視点を右に転じ重心をそちらにずらしつつ右裏拳。 一瞬の貯めのあと、今度は視点を左に転じ、右足で回し蹴り、間を置かず左足で後ろ回し蹴り、その回転の勢いを加速させるようにジャンプし、空中で右回し蹴り。 着地と同時に身を伏せ、回転の勢いを止めずに左の脚払い。 その勢いに乗ったままで身を起こし、全身のバネを使って大きく前方に踏み込みつつ、正拳。 正拳を打ち放った姿勢を保つこと2秒ののち、私は構えを解き、マスターさんに向き直ります。 そして膝を落とし正座をすると、深々と頭を下げます。 「ハウリン芸が18、演舞の型乙・心守・無手……お粗末さまでした」 「お見事でした」 すかさず、いつの間にやらこちらに膝を向けなおしていたマスターさんから、ぱちぱちと拍手をいただきました。恐縮です。 「とまぁこのように、隠し芸の大半は『踊り』の類なのです」 「ほほう、そうでしたか」 今のも基本的には、もとより武装神姫に備わっている攻撃モーションパターンの複合なのですが、それをうまく組み合わせればちょっとした演舞になるという訳です。 「ほかにも、十手や棘輪を用いたバージョンや、吠莱を棍に見立てたバージョン、それらの複合があり、それぞれが数パターンに分かれています」 さらには、胸甲・心守を装備している時と素体の時では関節可動範囲も変わってくるため、そこでもバージョン違いが存在しまして。 「結果、『演舞』の類だけでざっと半数は占めますね」 「なるほど、さすがは武装神姫と言ったところですか」 「そして他にも、開発中にモーションテストでプログラムされたダンスなどもありまして」 踊りという見栄えがあり重心の移動の大きい動きは、デモの意味でもテストの意味でも効果が高いため、武装神姫そのものの開発期にも、我がケモテック社内での開発期にも様々なダンスが仕込まれたようです。 「それが隠し芸として犬子さんに残されているわけですか……なるほど、武装神姫が成立する黎明期から受け継がれてきたものと考えると、感慨深いものがありますねぇ」 なるほど。その視点は、私にとっては新鮮です。 「私にとっては単なる用意されたプログラムと言う認識でしたが……確かに改めてその成立に思いを馳せてみると、こう、身が引き締まるというか、足場が踏み固められたような想いです」 「そうでしょうね、それはあなた方の先達の足跡そのもの……言うなれば武装神姫の、『伝統芸能』と言ったところですから」 そのような形容をお受けすると、まだまだ歴史の浅い武装神姫なりにも受け継がれてきたものがあるという実感を得て、深く感情回路に共鳴するものを覚えます。 それにつけてもさすがマスターさん、私に感銘を受けさせるお言葉もお手の物です。 ……まぁ、私がマスターさんのお言葉ならなんでも感銘を受けるお手軽武装神姫だと言うことは置いておきましょう。 それはともかく。 「そんな訳で、私の中には様々なダンスが用意されているわけですが、我らがケモテック社製MMSともなれば、単なるダンスのさらに一つ上の芸も持ち合わせておりまして」 気を良くした私はさらなる芸をお見せするべく、立ち上がって右手を高々と差し上げ、ぱちんと指を高らかに鳴らしました。 それに呼応するように、マスターさんの座卓に備えられた私のクレイドルの傍に待機中だったプチマスィーンズが一斉に起動、螺旋を描くように一度天井近くまで上昇します。 そしてその高みから、私の背の壱号の指令を受けて、私の目の前に弐号が着地、さらにその上に参号がまたさらにその上に肆号が、どん! どん! どん!と積み上がって行きました。 すかさず私は、肆号の上に顎を載せます。 さらに私の頭部の上に伍号がどん!と着地。その衝撃に耐えながらも、フォーメーションを組み終えた私は、両手をしゃきーんと大きく雄大に広げて、芸の完成を示す最後の言葉を言い放ちます。 「トーテムポール」 ……さすがはマスターさん。常人ならば10秒は反応に困ると思われるこのハウリン芸の38を目の当りにして、わずか二秒で拍手を開始されるとは。いつもながらお見事な義理堅さです。 ちなみにこの一連の仕草及び集結の軌道は実は必要のない動作なのですが、まぁバトルならばいざ知らず芸としてお見せするならば演出も重要と言うことで、いささか芝居がかっておりますので、悪しからず。 「ええと、それで、そのトーテムポールが、ダンスの一つ上の芸なのでしょうか?」 「いいえ」 わりと微妙なバランスを保つ必要のあるトーテムポールフォーメーションでは顔が動かせないので、視線だけでマスターさんを見上げて答える私です。 「これは単に、プチマスィーンズを手元に呼び寄せるついでです」 「そうですか」 「そうです」 つまりこれからが本番です。 頭上から伍号が退いたので、私は身を起こします。 肆号、参号、弐号も順にフォーメーションを解除し、改めて私の背後、腰の高さに整列しました。 おあつらえ向きに、CMに突入したテレビからは、リズミカルなBGMが流れてきます。 「お見せいたしましょう、ハウリン芸の難易度ナンバー3、『アドリブダンスwithプチ』を!」 私はつま先でステップを刻んでCMのリズムとの同調をはかり、同時に、私の背後に控えたプチマスィーンズたちにもリズムに合わせて揺れるような機動をとらせ……そして同調を終えた瞬間、BGMにあわせダンスを開始します。 今流れているのは化粧品のCMなのですが、BGMに流れるタイアップ流行アーティストのナンバーはアップビート気味で、私はそれに対して予測演算も交えつつリアルタイムで相応しいダンスステップを検索即実行、遅滞なく身を踊らせて行きます。もちろん背後のプチマスィーンズたちにもリズムに合わせた動きをさせ、バックダンサーとして演出させます。 ……やがてCMが途切れ、別のCMに切り替わります。今度は日本茶のボトル飲料のCMで、BGMはうって変わって和風のゆったりしたリズムのものになりました。 すかさず私も処理リズムを再調整、再び同調を取ると、今のBGMにあわせたゆったりとした日本舞踊に近いダンスに切り替えます。 そんな風にCMの続く3分間、次々とBGMにあわせたダンスを披露して行きます。 ……簡単に言っていますが、わりと大変なのですよ? あらかじめ決めたリズムであらかじめ決まった機動を取るのではなく、その場に流れるBGMに相応しい動きを瞬時に選択、その選択にあわせた身体運動の制御、さらにはプチマスィーンズへの指令までをも並列処理。 しかも、それぞれが場当たり的ではいけません。ダンスとしての統一感があるように……と、口で言えば一言ですが、それを判断しうる感性の発達が大前提として必要で、つまりいわば創造性をも駆使せねばならないのです。 ハウリン芸の難易度ナンバー3に数えられるのは伊達ではないのですよ。 まぁもっとも、そんな「水面下で激しく足を動かす白鳥」的な事情は、ちゃんと説明しないとなかなかオーナーには……とりわけマスターさんには伝わりにくいのですけどね。 とはいえそれを差し引いて見ても、BGMに合わせて次々変わる、バックダンサーを従えてのダンスには見栄えがよく、それだけでもハウリン芸の上位にランクインしていることの説得力は十分かと。 CMが明けダンスも終了させた私は、座礼をしようとして……ちょっと考えてそれは止めて、代わりに頭甲を外します。 そして頭甲を持った右手を一度頭上に差し上げてから、右足を左後方に引きつつ、右手を大きく横から回すように胸の前まで持ってきながら、一礼。 ちょっと優雅を気取ってみました。 すかさず(今度は遅滞なく)マスターさんからの高らかな拍手を頂きます。 「素敵でしたよ、犬子さん」 「過分なお言葉、痛み入ります」 私は恐縮しつつ照れながら、頭甲を付け直しました。うん、セット良し。 「お気に入りいただけたようで何よりです。現状これが、私のお見せできる最高の芸ですので」 再び座布団の上に正座し、私は深々と座礼します。 その言葉に、マスターさんは首を僅かに傾げました。 「先ほど犬子さんは、今のダンスを三番目と仰っていたように思いますが?」 む、つっこまれてしまいましたか。これは私が迂闊だったと言うべきでしょう。とはいえ聞かれたら嘘が言えないのが武装神姫。答えるほかありません。あとはうまく、話題を誘導できるか否か。 「ええ、仰る通り、難易度の高いものがさらに二つあるのですが、現状ではお見せできないのです」 「ほほう? それはどういった訳なのですか?」 「はい、一つは芸として危険度が高く不適切な面もあるための自粛です。 そしてもう一方は単純に、まだ完成していないのです」 マスターさんは、再び小さく首を傾げます。 「完成していない状態で、芸として登録されているのですか?」 「はい、その芸の理論だけ与えられて、実行部分はすっぽりと抜け落ちている、そんな状態でして」 「それは不思議なお話ですねぇ。その理論と言う部分を、お聞かせ願えますか?」 「はい。その芸、『オリジナルダンス』と銘打たれたそれの解説は、『オリジナルの歌を創作し、それに合わせてオリジナルのダンスを踊る』とだけ記載されております」 「ふむ、オリジナル、ですか……」 マスターさん、それがどういうことかと思案するように、一口お茶を飲まれました。 「犬子さんは、それをどう思いますか?」 「はい」 私は居住まいを正し、ずっと考えていた答えを口にします。 「私はこれを、『開発者の皆様からのメッセージ』ではないか、と考えております」 <そのじゅう> <その12> <目次>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1841.html
天使のたまご (作:Taka ) ――CSC認識、起動シークエンスを開始します ――駆動系、スキャン開始……クリア ――感覚センサー、スキャン開始……クリア ――人格プログラム、スキャン開始……クリア ――プログラム展開……基礎人格の設定を完了 ――シークエンス、オールグリーン 天使型アーンヴァル、起動します―― 目覚めの時が来た。 起動シークエンスの完了と同時に、私の中に自我が宿る。 これから私は、どのような人生を辿るのだろうか。 ……いや、きっと人生という表現は正しくない。 私は武装神姫。 人に在らざる物でありながら、人の心を与えられた者。 それ以上でもそれ以下でもない。 さあ、目を開けよう。 マスターと呼ぶべき人物が、私の目覚めを待っている。 ゆっくりと開けた視界に最初に写ったのは、三角にとがった耳と横に長くのびた白いヒゲ。 そして私をじっと見つめる、まんまるの瞳だった。 本日: - 昨日: - 累計: - 1.武装神姫、里親募集中 2.目覚めは猫の鳴き声で 3.僕と彼女とコーヒーと 4.猫侍、見参 5.ショッキング・ショッピング リンク・コラボ大歓迎です。 許可は不要ですが、報告していただけると中の人が飛び跳ねて喜びます。 ご意見・ご感想など御座いましたら、こちらへお願いいたします マルチみたいですね、ノエルさんってw …こういう日常を書くはずだったのに、どこで道を間違えたのだろう… -- 第七スレの6 (2008-05-05 21 26 56) 大変良い日常でした。ぬことノエルさんの絡みとかポイント高いです。……ほんわか日常書ける人って頭おかしいと思う(褒め言葉) -- 神姫愛好者 (2008-05-08 09 37 09) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1308.html
「ところで犬子さん」 「なんでしょうマスターさん」 「貴女本体の起動と充電用クレイドルとPC接続キットの設置。これで、準備としては十分なのでしょうか?」 「はい。マスターさんの私の主な使用意図は、電子秘書及び実生活での電子ツールの使用サポート、とのことでしたよね? それでしたら、私本体のみの起動で十分にこなすことが可能です」 「なるほど、頼りにしております」 深々と座礼するマスターさん。 「ご丁寧に。誠心誠意勤めさせていただきます」 同じく擬似座礼で深々と頭を下げ返す私。 どうにもマスターさんが正座でこちらに向かれるので、私も自然と同じ姿勢を取りたくなります。 「ですが、ですね……貴女の入っていた箱の中に、他にも色々な部品が入っているのが、何と言うか非常に不安をそそられるのですが」 ざりざりと、箱を揺らして中にパーツが大量に残っていることを主張するマスターさん。 「ああ、それですね。ご安心ください。そちらは武装パーツですので、戦闘行為を行わないのであれば基本、必要はありません」 「戦闘行為、ですか」 「戦闘行為、です。これでも一応、『武装』神姫ですから」 「そういうものなのですか」 「そういうものなのです。もちろん、マスターさんのように電子秘書的な活用をしていただいても結構ですし、単に着せ替えやコミュニケーショントイといった愛玩目的で購入される方もいらっしゃいます。必ずしも、バトルを行なう必要はないのです」 私は似非正座から立ち上がるとその場でくるりとターンし、可愛らしいポーズをキメて言葉を続けます。 「アナタに合わせた、アナタだけの遊び方! アナタに役立つ、アナタだけの活用法! 武装神姫の世界は、アナタのお望みのままに工夫次第でどんどん広がって行きます! もちろん、それをお助けするサポートグッズも各種充実! さあ、アナタもレッツトライっ!」 「それも販促義務ですか?」 「申し訳ありません、起動直後だとどうしても」 「ままなりませんねぇ」 「ままなりません。あ、同じようにバトル関連情報の告知もありますけど、ご覧になります?」 「せっかくですから、見せていただきましょう」 「了解いたしました。では……」 私は改めて今度は軽くシャドーボクシングを決めると、びしっと勇壮なポーズをとって言葉を続けます。 「遠距離の敵を撃ち抜け! 接近して相手を圧倒せよ! 敵の攻撃を華麗に交わせ! なんといっても、バトルは武装神姫の花形! 様々な武装神姫の、様々な戦い方! 基本セット同梱の武装でもバトルはお楽しみいただけますが、そのほか様々なニーズに合わせて、武装も各種充実! あなたの戦略に合わせて武器を増やすもよし、あなたのこだわりに合わせて武装を選び抜くもよし! 強い武装・カッコイイ武装・かわいい武装・コミカルな武装、各種豊富に取り揃えた武装神姫武器パーツは、全国神姫センター及び提携各店、ネット通販でお求めになれます!」 「お勤めご苦労様です」 深々と座礼するマスターさん。 「いえいえ、ご清聴ありがとうございました」 再び似非正座の姿勢を取り、深々と擬似座礼。 「それでつまりこちらの部品は、そのバトルのためのものと言うことなのですね」 「ええ、基本そのとおりです。ですが、日常生活においても役立てることは可能です」 「おお、そうなのですか?」 私は立ち上がり、箱の中からパーツを一つ一つ取り出して行きます。 「ええ、例えばこのヘルメット、【頭甲・咆皇】などは、単純に不意の衝撃から素体頭部パーツを守るほかにも、各種センサーの増強も行なえます」 「おおー」 「次にこちらの【胸甲・心守】及び【腕甲・万武】ですが、こちらも単純な素体保護の他に、組み合わせることで簡易的なパワードスーツとなり、神姫素体のみでは持ち運びの困難な物体の移送も可能となります」 「おおー」 「それからこちら、【脚甲・狗駆】及び【ドッグテイル】は、素早い移動とその際のバランサーとなり、ハウリンタイプの誇る接地機動性能を十二分に引き出せます。神姫にとっては約10倍のスケールである人間の生活空間で活動するためには、必須なものと判断いたします。 なお、【ドッグテイル】には本物の犬を模した、簡易的な感情表現機能が備わっていることを付記します」 「おおー」 「武器パーツの説明に入りまして、まずはこの【十手】。刃などもない単純な形状の打撃武器ですが、単一素材で構成された円柱形の骨太な構造の頑強さは神姫の近接武装の中でも群を抜いております。 テコの原理を利用することで、繊細なマニュピレーターに代わりプルタブの開封を行なう事も可能でしょう」 「おおー」 「マスターさん、わりと『どうでもいい』と思ってませんか?」 「気のせいですよ犬子さん」 「そうですか」 「そうです」 「では説明を続けさせていただきます。こちらの小さいお稲荷さんのようなものは、【プチマスィーンズ】です。中枢ユニットを介して遠隔操作が可能で、遠隔射撃を得意とする分離独立攻撃ユニットなのですが、まぁ射撃はせずとも、神姫以上にコンパクトなボディとその敏捷性、さらには群体であるという特性を活用すれば、家具の陰に隠れた探し物なども効率的に探索可能です」 「おおー」 「【棘輪(きょくりん)】、【吠莱壱式(ほうらいいちしき)】は共に遠隔武装です。日常生活においては、えーと、その……害虫駆除に応用することが可能かと」 「さすがにこの辺になると苦しくなってきますね」 「申し訳ありません、やはり基本的にバトル前提のツールですので」 「そうなのでしょうね」 「そうなのです」 「ですが……」 ふむ、とマスターさんは顎に手を当てて考え込みます。 「『武装』神姫である以上、やはりそれらの装備もひっくるめての武装神姫なのでしょうね」 「……ご慧眼です、マスターさん」 といいますか、バトルには興味をお持ちでなさそうだったマスターさんが、バトルも含めての武装神姫であるとご自身で気付き、そしてそれを認めて下ったことに深い敬意と充実感を覚えます。 「念のため確認しますが、それらの部品を装備しても、例えば僕の本来の目的である電子秘書の役割に齟齬をきたすような、そういったデメリットはありますか?」 「いえ、そういうことはありません。強いて言えば、充電時の消費電力が、武装分が上乗せされて30%ほど大きくなる程度です」 「なるほど、日常生活でも役立てることが可能で、デメリットもその程度と言うのなら、使わない理由はありませんね。 犬子さん、せっかくですので、その装備をつけてみていただけますか?」 「了解しました――あの、私自身が装備してしまってよろしいですか? それともマスターさんがパーツの取り付けを行ないますか?」 やはり武装神姫も玩具であり、セッティングなどをオーナー自身の手で扱うことも楽しみ方の一つではあります。 「あー、いえ……見たところ組立説明書もないですし……ここは犬子さん、お願いできますか?」 「了解いたしました」 まぁ、オーナー自身云々は、一般論のお話ですし。マスターさんの場合は例外に含まれることは明白です。 「では、少々お待ちいただきますが……」 ちょっとここで、言葉を切り。 「あの、もしよろしかったら、装備してる間は後ろを向いていていただけると嬉しいのですが……」 「ええと、それは構わないのですが……僕自身に取り付けされるのはよくて、犬子さんがご自身で取り付けをなさる場面を見られるのはイヤなのですか?」 「そのあたりは微妙な神姫ゴコロといいますか、察していただけると助かります」 「複雑なのですね」 「複雑なのです」 マスターさんは私の入ってた箱を手に取るとそれを縦に置き、それからくるりと背中を向けました。 どうやら、衝立に使えと言うことのようです。 「紳士ですねマスターさん」 「終わったら呼んで下さいね、犬子さん」 そう応えるマスターさんの耳が、ちょっぴり赤くなっていました。 <そのに> <そのよん> <目次>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2526.html
『模倣技』 響から聞いた話で行き着いた尊の新たな戦術。ネットやシミュレータに記録されている様々な神姫の必殺技、スキル、得意技を蒼貴、紫貴に見せる、或いは受けさせる事で学習させ、自分達の使えるようにアレンジして使用する。 何でも真似できるわけではなく、雷や炎が伴うような大技はCSCの使い方もあり、基本的にコピーできず、武器を用いた技は蒼貴と紫貴の持つ武器の範囲内でアレンジしないと使えない。 また、アレンジしたものであるため、オリジナルと比べると、その技の熟練度の差、アレンジによる劣化などの問題がある。 『蒼貴』 先打(さきうち) 蒼貴がティアの技『ノールックショット』を見て取得。相手の動きを先読みして、何も見ずにその位置に飛び道具を放つ ↓ 元ネタ:『ノールックショット』(『ウサギのナミダ』の主人公 ティアが使用する技) 誘牙(ゆうが) 響から聞いたB3のトリックから蒼貴が取得。神力開放状態において苦無を巻いて、本命の手裏剣を当てる。 ↓ 元ネタ:名称不明(少年と疾走姫にて『不良品』のB3が使用した技) 捻脚(ねんきゃく) 燐の技『隼』を見て蒼貴が取得した。空中で身体のバランスをわざと崩して回転しその遠心力を加えた後ろ回し蹴りを放つ。 その軌道は予測できず、上からかかと落としの様に放つこともそのまま水平に繰り出すか、その軌道は受ける直前にならなければ分からない。 ↓ 元ネタ:『隼』(武装神姫のリンの主人公 リンが使用する技) 霰舞(あられまい) シルヴィアの技を見て、蒼貴が取得した。大きく跳躍し、頭上で勢いに乗ったムーンサルトを用いた三連撃のダンスを見舞う。 ↓ 元ネタ:名称不明(ツガル戦術論の主人公 シルヴィアが使用した技) 『紫貴』 『エアロスティング』 モルトレッドの技『スティンガーテンプテーション』から尊がアレンジを思いつき、紫貴が取得した技。エアロヴァジュラで目にも留まらない高速の打突を殺到させる ↓ 元ネタ:『スティンガーテンプテーション』(『The Armed Princess―武装神姫―』のモルトレッドの使用技) 『ストームトリック』 リンの技『裂空』を見て紫貴が取得する。基本的にはわざと相手に隙を見せることにより相手が攻撃準備に入るために足を止める瞬間を作りだし、強靱なサブアームのばねを生かして瞬時に相手の背を取る技。 ↓ 元ネタ:『裂空』(『武装神姫のリン』の主人公 リンの使用技) 『サイクロンクロウ』 脚力と周りの長い得物を利用した反動で自分の身体を対象に飛ばし、その勢いでサブアームクローで突き刺す技。反動を利用をした咄嗟の攻撃としても使える。 ↓ 元ネタ:『デーモンロードクロウ』(『15cm程度の死闘』の主人公 エルの使用技) 『ブラッドウインド』 ニーキが用いる『血風懺悔』を見て、尊がアレンジを思いついて取得。アサルトカービンを突き出してそれによる打撃で体勢を崩し、至近距離で連射する。 ↓ 元ネタ:『血風懺悔』(『15cm程度の死闘』のニーキの使用するスキル) 『連携技』 『フェイタルスラッシュ』 紫貴が蒼貴を敵めがけて投げつけ、高速で突撃し、すれ違い様に忍者刀で居合い斬りを放つ。 突撃時の相手の行動への対応力が高く、回避行動をされている中でもある程度のコントロールが利く。 ↓ 元ネタ:『居合い抜き』(『鋼の心 ~Eisen Herz~』のフェータが使用) トップ
https://w.atwiki.jp/1548908-tf3/pages/1291.html
西口良夫:ラビリンス・サーカス1 合計40+6枚 上級 0枚 下級 23枚 ウッド・ジョーカー×1 ガーゴイルの道化師×1 仮面道化×1 幻想召喚師×2 ジャイアント・オーク×3 ドリーム・ピエロ×3 マーダーサーカス×3 マーダーサーカス・ゾンビ×1 ものマネ幻想師×2 闇・道化師のサギー×1 闇・道化師のペーテン×3 融合呪印生物-闇×2 魔法カード 0枚 罠カード 17枚 悪夢の迷宮×3 アヌビスの呪い×3 死霊の巣×2 断頭台の惨劇×3 デビル・コメディアン×3 道連れ×3 エクストラデッキ 6枚 アルカナ ナイトジョーカー×3 デビル・ボックス×3
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/958.html
―海神― その日も私は主の肩に座る。主はこの寒空の下、神姫センターの中にも入らずにただ自動販売機で購入したココアで暖を取っていた。 11月の末のその日、天気予報が正しいとすればこの後雪が降るという。 温暖化が進み、暖冬という言葉さえ使われなくなるくらい温かい冬が当たり前になった昨今、この時期にこの地域で雪が降るなんて。 それ程に冷えるというのに、主はそれでも暖房の効いているであろう店内に入ろうとはしない。 しかしその事についてなんら感慨を持たない自分は、やはり欠落しているんだと納得出来る。 そしてそれを少しも悲しいと思わない事にも、違和感を覚えなかった。 そこにある現象や、歴然とある事実に対して理解は出来ても、そこになんら感情を見出す事ができない。 それは私が私であると定められた時からの性質。要するに仕様なのだ。 MMSのヴァリエーションとして武装神姫が市場に出回る前段階で、試験用と銘打たれて製作されたいくつかの神姫が存在する。 『武装神姫』の前身である『神姫』シリーズは、現在の武装神姫の素体のみを販売していたわけではない。 元来『神姫』シリーズは戦闘遊戯用に作られたものではなかったのだ。だと言うのに『神姫』を使用したバトルが、それまで行われていた『GFF』や『SRW』などの影響を受け、派生的に生まれた。 その状況を見て取り、EDEN―PLASTICSを含めた各神姫メーカーが戦闘に対応した『武装神姫』をシリーズ化したのだ。 似て非なる存在『神姫』と『武装神姫』。その橋渡しとなる存在が『ジ・オリジン』とも称される試作品の数々である。 プロトタイプ、またはテストタイプである『ジ・オリジン』の大多数は、現在発表されている製品版に劣るか、良くても同等のものでしかなく、それらは研究用や保存用として数体残されるのみでほとんどは廃棄処分されている。 その中には現状のレギュレーションの枠から逸脱した、戦闘面においてずば抜けた能力を持つ『ジ・オリジン』が存在した。しかしそれはあまりに『バトル』重視で、感情面や情緒面での欠損が大きい機体であった。そういう意味では、やはり現行の『武装神姫』に大きく劣る。 当然それらは研究用として全て保管された。 だが、そこに人が介入している時点で『絶対』外部に漏れることは無いと言い切れなくなるのが現実で。 実際私は研究室にではなく、主の肩に座って、居る。 主がその私用を済ませた帰り道。暗くなった夜空は厚い雲によって更に影を強める。 主は先ほどの、あの男が行った行為に酷く腹を立てているらしく、不快感を隠そうともしない。ただ黙々と家路を急いでいた。 あくまで私用での外出なので、家の車を用意していない。主は私事で家の権力を使用することを嫌悪していた。 だからこの日も、主は私を肩に乗せたまま、夜の通りを歩いて帰る。 私と主は平時より会話を楽しむという習慣はなかった。だから主の機嫌が損なわれていてまるで口を利こうとしなくても、主と私の間にある沈黙は普段となんら変わりが無いものとして認識される。 ただ、不快感があまりに過ぎたのだろうか。常であれば避けて通る事の無いその暗い路地に、主は足を向けた。 「主、この道は安全とは言いかねます」 警告。 そのつもりで私は言葉を発したのだが、主は聞こえなかったのか、それとも無視しているのか、足を止めることをしなかった。 私は再び同じ言葉を発しようと考え、そして止めた。主の決めた事に私が口を出すのはあまりに差し出がましい。 長い一本道。人気も無く、そして街灯も疎らな道。 そこで私はすぐに二度目の警告を口にしなかった失敗に気が付く。 人が感じる事の出来ない深い影の、その闇の中で。 生糸を引っかくようでそれでいて耳障りな音が。 赤い光点を伴い辺りを侵略し始める。 赤 赤 赤赤赤赤 赤赤赤赤赤赤赤赤 赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤 無数の赤い光点。そしてその薄明かりに晒され浮かび上がる、異形。 赤い光点を伴ったその全てが、武装神姫。 だがそれらの体はいびつに捻じ曲がり、四肢はその胴との接合を不完全とし、人とも、神姫のそれとも異なった挙動を行う。 感情を実感できない私よりもその表情には意思を窺う事は出来ない。 その虚ろで何も映さない瞳が赤く照る。 本来カメラであるはずの神姫の瞳が、ライトのように光るなどありえない。 間接部を無視して可動範囲を広げる事など不可能。 砕けた関節を支えるのが、その先にある壊れた脚部であるなんて非現実的だ。 ならば、今目の前にあるのは一体なんだ? 私の思考はここで中断せざるを得なかった。 武装神姫ではありえない速度で、赤い瞳の『ソレ』が主に近づく。 リミッターを与えられた私は、そんな速度で動く事は出来ない。が、それでも主に襲い掛かる凶刃を受け止めることにどうにか成功した。 「くっ……!」 あまりに強大すぎるその純粋な圧力に、私の腕が硬い音を響かせる。 相対するソレの腕は、自らの力に耐えられず砕ける。 砕けるのに、しかしそれでもそこにあった。 データ上のウソが入り込む余地の無い、現実にある私の体は通常の武装神姫とは比べ物にならないくらいに頑強だ。だが、その頑強さを持ってしても同じ圧力をもう一度防ぐ事は不可能。 対して赤い目をしたソレは、現実ではありえない不滅性を体現している。 そんなの、勝負になるわけが無い。 とるべき手段は一つしかなかった。 その点、わが主は頭の回転が速い。背を向ける危険を冒すことにはなるが、すばやく踵を返すと全力で走り出す。私も主の行動に合わせ、追っ手が来る事を予測し向きを変えた。 はたしてソレは予測通りに主と私を追う。 明るい所に逃げることが出来れば、人が行き交う通りに出る事が出来れば、少なくともこの状況から脱する事が叶う。 雪が、降り始めた。 簡単に現状を打破させてくれる程には、甘くはなかった。 主と私はことごとくを妨害され、邪魔を受け、そして誘導された。 気がつけばそこは人気の完全に途絶えた公園。 住宅地だけを経由し、これほどの敷地を誇る公園に到る事を私は知らなかった。 「……随分と、ベタな所に、追い込まれたわ、ね」 ハァハァと肩で息をしながら、それでも茶化したように主は呟く。 しんしんと雪の降るその広場で、主と私は完全に囲まれた。 確認できるソレの数は九。多くは無いが、その能力を顧みれば決して少ない数ではない。 確実に市販の武装神姫を破壊でき、そして主を殺す事のできる以上の数。 「万事休す、みたいね」 半ば諦観めいたものが混じったようにも取れる主の言葉。 だがもう半分は、間違いなく覚悟を決めた者が発する声音。 私は武器を手にする。 「海神、コードF解除」 主のその声で、その言葉で、私の中の枷が無くなっていくのを実感する。 私が本来の私、『ジ・オリジン』の中でも特に戦闘に特化して開発された『欠陥品』に戻ってゆく。 私がかつての力の全てをその手に戻した瞬間、二体のソレが主を、三体が私目掛けて襲い掛かる。 刹那。 「スキル発動 夢想散華」 戦闘特化型試作体である私は、武器の能力に頼ることなく刀剣の類であれば私固有のスキルを発動させる事が出来た。 私は取り戻した本来の能力の全てを振るい、五体のソレを完膚なきまでに破壊する。 その形が、一片すら判別できない程に。 何のトリックだかは解らないが、形すら残らないほどに粉々にしてしまえば動きようもあるまい。 事実、私が破壊した五体のソレが動く事はなかった。 だが…… だが、反抗もここまでだった。 残りの四体をしとめるための力を、私は残してはいない。 スキルを発動させるための力も、もう尽きてしまった。 「絶対、絶命ですか」 主に習い、私も状況を簡潔に述べてみる。それでもしっかりと両の脚で地面を踏みしめる。 残る四体は、ジリジリとした動きを必殺の確実さを伴う素早い攻撃へと転じさせた。 四体が四体共に、わが主に向かう。 私は何も考える事が出来なかった。こんな事は、初めての経験だ。 そして何も考えていないのに、私の体は私の思考を置いたままに勝手に動く。 私ではその四体相手にどうすることも出来ないというのに…… 最小限の力で主の膝の裏を蹴り、私は更に高く跳ぶ。主の体は突然加わった力に抗う事が出来ず、バランスを崩し膝から落ちる。 ソレが標的としていた座標にはすでに主の頭は無い。 しかし胸を標的としていたソレの前に、今は主の頭がある。 思考した上での行動ですらなく、つまりは反撃の時機さえ計れない私は、それでも体の、今まで感じたことの無い『思い』の指示に従い、主とソレの間に自らの体を割り込ませた。 時の経過が引き伸ばされる。 目の前には驚いたような瞳の主の顔。 背後を見ることは出来ないが、それでもセンサーが感じ取る、確実な死の象徴。 迫る刃。 私の目の高さにある主の顔。 私の頭上で目標を失った赤い目をした神姫だったソレ。 主に近づく見知らぬ少女。 その少女共に現れた四枚の翼を持つ神姫。 その人影と小さな天使が主を守るものだと認識できた時…… わたしのこあが つ ら ぬ か れ た 海神というその個体は完全にこの世界から失われた。 だからこれから先の話はただの蛇足でしかない。 小規模な爆発が四つ。 あっという間だった。 四枚の翼を持ったそのアーンヴァルは、ただレーザーソードを振るだけで残っていた四体のソレを破壊した。 現実は何時の世でも簡単にフィクションに追いつく。 だから実際にこんなご都合主義的な出来事が起こっても間違いではないし、まあたまには良いだろう。 そういう意味では、現実も言うほど捨てたものではないらしい。 海神のオーナーであった結城セツナは、あまりにも瞬間的に起きたそれらの事象に、それでも混乱することなく、自身を救ってくれた者に目を向ける。 果たしてそこにいたのは、夜の空よりなおも暗い、闇色の外套を身につけた小柄な影。声のトーンで何とか女性だと判別は出来たが、フードに覆われたその顔を覗う事は出来ない。 四枚の翼を持つアーンヴァルが彼女の元へ戻ると、彼女はフードから顔を出した。 顕になったその顔は、黒髪の15歳くらいの少女のものであった。瞳だけが青く輝き、日本人離れしていた。 少女とその少女の神姫と、セツナの間に何があったのかはあえて記さない。 当然その少女が何者であったか記す事も無い。 なぜならこれはただの蛇足。 必要なのは 結城セツナの命が失われる事はなかった。 という事実だけ。 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1309.html
「どうもありがとうございます、お疲れ様でした、犬子さん」 「いえいえ、お役に立てて光栄です、マスターさん」 正座をして深々と頭を下げる――座礼するマスターさんにあわせ、こちらも武装神姫の関節構造の許す限りの範囲で真似た、似非正座姿勢で深々と頭を下げ、擬似座礼を行います。 絡まったコードを共同で解きほぐし、目を離せばUSB端子をスピーカー用マイク端子に繋ごうとするほどの機械オンチなマスターさんに僭越ながら私めが指示を出しつつ、今しがた無事にクレイドル及びPC接続キットの接続、それからついでにマスターさんのユーザー登録が完了しました。 クレイドルやPC管理といった管理環境が整って一安心と言うのもあるのですが、特にユーザー登録が完了したことに、私の感情回路は大きな満足を覚えています。 「そんなに嬉しいことなのですか、ユーザー登録は?」 「ええ、言ってみればマスターさんとの絆を、公式に認めてもらったということですから」 「なるほど、そういう捕らえ方もあるのですね」 「はい、武装神姫は、オーナーとの絆が深まることに喜びを感じるようになっていますから」 「そういうものなのですか」 「そういうものなのです。それに……」 「それに?」 私は似非正座から立ち上るとその場でくるりとターンし、可愛らしいポーズをキメて言葉を続けます。 「ユーザー登録をしていただくと、定期メンテナンス料金や公式通販利用時の割引やバトルロンド登録手続きの簡略化! 登録ユーザー様を対象とした限定パーツの販売や、最新の武装神姫情報満載のメールマガジンの無料配布といった、各種特典がもれなくついてきて大変お得なのですっ!」 「なんというか、明らかに今までと声のトーンと芸風が違うというか、非常に定型文かつ宣伝文句ですね」 「申し訳ありません、やはり私も商業商品である以上、販促活動の義務からはなかなか離れられなくて」 「世知辛いですねぇ」 「世知辛いです」 「ま、何はともあれ……」 「はい?」 「改めて、これからよろしくお願いいたします、犬子さん」 すっかりおなじみ、深々と座礼するマスターさん。 「はい、こちらこそどうぞよろしくお願いいたします、マスターさん」 私も似非正座に座りなおし、精一杯の擬似座礼で応えました。 こうして私の、マスターさんとの生活が始まったのでした。 <そのいち> <そのさん> <目次>
https://w.atwiki.jp/src_review/pages/802.html
671 :【少女達のラビリンス】:2008/02/09(土) 22 25 30 ID VYMFMTIg0 踏んでから学園シナリオと気付く。まぁいいや。 ちなみに学園は最初期に一応関係者だった。今は空気。 あと百合は嫌いじゃないよ。 【感想】 とりあえず一話まで。 うーんまともに分かるキャラがエロい人しかいない。 つくづく思うんだけど最近のキャラってホント印象に残らない。 某M明氏並に濃いキャラ、とは言わんが名前出されてどんな技持っていたかぐらいは 思い出せるキャラを頑張って作って欲しいなあ。 ううん、会話がおもしろくない。 M.MM氏のシナリオだから期待していたんだけど、なんだ、 美味しいコーヒーつくるために頑張っていたらいつのまにかコーヒーが冷めた感じ。 百合百合な雰囲気を持ってくるまでに時間がかかりすぎたかな。 戦闘でやっとか、って感じ。戦闘は特に書く事無いかなぁ……。 んでごめん、2話は遠慮しておく。 【総括】 やっぱり痛いのが『キャラと設定を把握できてないと辛い』ことかなー。 会話で勢い殺しちゃっているのも×。 そのせいで感情移入もしにくくなっちゃってる気がする。 長門有希対桂言葉みたいなのを期待したんだけど、うーん。 キャラ借りている、という事で控えめになっているんだろうか。 もっとはっちゃけちゃって良いと思う。いろいろおしいシナリオだった。
https://w.atwiki.jp/voiceroid-game/pages/82.html
ゲーム名 あかあおラビリンス 作者 もちょ 制作ツール phina.js ジャンル パズル リリース日 2019/3/29 更新日 2019/3/29 動作環境 Windows,MacOS,Android,iOS メインキャラ 琴葉姉妹 価格 フリー 画像 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 ゲーム紹介 迷路を抜けて、離れ離れになった琴葉姉妹を再会させるゲームです。 茜と葵が「ふれる」(隣り合う)とステージクリアです。 全5ステージ、プレイ時間は10分~30分程度を想定しています。 プレイ https //motyo.itch.io/akao-labytinth コメント 最新の10件を表示します。 名前